目次 はじめに 概念 法の適用範囲 罪名 時効 被害者の定義 内容 書込み場所 賠償金額 弁護士費用 訴訟の起こし方 訴訟の種類 刑事告訴の方法 未成年による刑事告訴 用意する物 付記 警察の能力 弁護士の探し方 2ちゃんねるについて 最後に 主な参考資料 ■■■はじめに■■■ 近年増えているのが、2ちゃんねるなどで、 オンラインゲームのキャラクター名が中傷された、という相談です。 あなたのキャラクターが誹謗中傷された時の、法的な対処法を記します。 インターネット上でのイジメは、参加しているのは多人数でも、先導しているのはわずか数人です。この数人を処分すれば、イジメは解決します。 ■■■概念■■■ 現行法では、オンラインゲームを取り締まる法律がありません。 監督省庁もありません。 RMTやBOTや多重をしたプレイヤーがいても、ゲームの利用規約に反しただけです。 利用規約とは、各プレイヤーが運営会社と個別に結ぶ、個人的な約束です。 法的拘束力はありません。 一般プレイヤーは、他プレイヤーの違反を訴えることはできません。 違反を裁く権利があるのは、運営会社のみです。 あくまで「権利」です。義務ではありません。 多少の違反は大目に見たいと運営会社が判断するのは、会社の自由です。 愛想を尽かしてゲーム離脱するのは、各プレイヤーの自由です。 ゲームは運営会社の所有物です。 運営会社が動かないから一般プレイヤーが違反プレイヤーを処罰する、という発想は、頼まれてもいないのに他人のサッカーの試合に乱入し、審判気取りでホイッスルを吹く、滑稽なものです。 一方、掲示板への中傷の書き込みは、国の法律に反します。 書き手は「犯罪者」です。 ゲームの規約違反者は、法律上は無罪です。中傷を堂々と訴えることができます。 アイテム詐欺のみは、法律上、現在はグレーゾーンです。 規約違反だからではなく現行法でも詐欺と認められることもあり、有罪判決を受けた前例もあります。 この場合も、詐欺と中傷は全くの別事件です。 詐欺者が中傷者を訴えれば、きっちり中傷の罪を償わせることができます。 ■■■法の適用範囲■■■ ■罪名 書き込みの内容により罪名が変わります。 それらをまとめて「不法行為」と呼ぶこともあります。 オンラインゲームのキャラクターが中傷された場合は、以下のものです。 刑法230条名誉毀損罪(刑事) 刑法231条侮辱罪(刑事) 民法711条による、損害賠償請求(民事) ■時効 不法行為の消滅時効は、不法行為の損害および相手(加害者)を知ったときから3年、不法行為のときから20年です。不法行為の損害および相手(加害者)を知らなければ、3年の消滅時効にはかかりませんが、不法行為の損害および相手(加害者)を知らなくても、不法行為のときから20年で、消滅時効にかかります。どちらかの期間がたてば、消滅時効が完成します。(民法724条) ■被害者の定義 かつて中傷誹謗は本名などの実在個人情報に限られました。 けれど現在の法解釈では、イニシャルや固定ハンドル、オンラインゲームのキャラ名も、個人を特定するものとして、処罰されます。 ■内容 「頭おかしい」「悪徳」「腐っている」 などの罵倒語だけでなく、 「BOT」「多重」「電波」「DQM」 などのゲーム用語や2ちゃんねる用語も、有罪です。 内容が事実であっても、不法行為です。 その個人やキャラクターの社会的信用を損なう内容かどうか、が争点です。 中傷文のコピーペースト、中傷目的のリンクなど、書き手のオリジナルでない文章も、有罪です。 コピーペーストの場合、著作権違反の罪も加わることもあります。 「氏ね」などは、場合により脅迫罪、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金です。 実際に殺す気がなくても、読み手が恐怖を感じれば、有罪です。 2ちゃんねる利用者同士で訴えるのは、注意が必要です。 自分の側も中傷発言をしていたら、罪が相殺され、双方無罪です。 ■書込み場所 多数の目に触れるかどうか、が分かれ目です。 友人と2人きりで喋るなら、何を言おうと無罪です。 掲示板に書くのは、有罪です。 読む相手が1人しかいない手紙は、無罪です。 似た内容の中傷手紙を大勢に送れば、有罪です。 ■賠償金額 損害賠償や慰謝料は、程度にもよりますが一般論では、 1件につき上限100万円といわれます。 実際に取れるのは20万から60万程度が主流ですが、たった1件の中傷から数百万も取れた事例もあります。 被害の度合いと弁護士の腕によります。 未成年が中傷し、支払い能力がない場合、保護者に請求されます。 1人の加害者が、大勢のプレイヤーを中傷していることもあります。 その場合、被害者全員が集団訴訟を起こせば、弁護士費用は一人前ですが、取れる賠償金は被害者の人数分です。 ある日いきなり加害者のもとへ数百万にのぼる損害賠償が請求され、自宅が差し押さえになることもあります。 わずかですが過去の判例で、暴走する犯罪者を止められなかったとのことで、スレッドに書いた全員が逮捕された事例もあります。 また、学校裏サイトなどで、侮蔑罪だけで家裁送検された事例もあります。 中高生による犯罪は、潮時がわからずエスカレートし、重罪になりやすい傾向があります。 ■弁護士費用 着手金と成功報酬、2種類を払うことが多いようです。 着手金は5万から35万円程度。 成功報酬は、取れた慰謝料のうち8%から24%。 という話もありますが、地域により案件により流動します。 弁護士との契約時、費用についてもよく話し合いましょう。 単独で訴訟するなら、損害賠償と弁護士費用はほぼイコールになり、小遣い程度しか儲からないことが多いです。 ■■■訴訟の起こし方■■■ ■訴訟の種類 まずは、本人訴訟か弁護士を雇うか。 弁護士を雇うメリットは、プロの手腕があることです。 匿名での訴訟もできます。 匿名を希望すれば、弁護士が代理人となり、弁護士の名で交渉等が進められます。 デメリットは、賠償金のほとんどが飛ぶほど高価なことです。 次に、民事か刑事か。 民事で訴えるなら、 書き込みの削除、損害賠償請求、どちらを望むかをハッキリしましょう。 書き込みを削除したいなら、すぐ2ちゃんねるの削除人あてに、削除願いを出しましょう。 損害賠償請求したいなら、書き込みは大切な証拠です。 IPログなどを削除しないよう、2ちゃんねるへ要請しましょう。 刑事の場合は訴訟ではなく告訴です。 詳しくは、次章に記します。 本人訴訟と弁護士雇用、民事と刑事、併用できます。 簡単なところは自分で作業し、交渉等の重要な場面のみ弁護士に出てきてもらうと、安上がりです。 民事と刑事は作業が地続きゆえ、たいていは併用です。 感情的になり反論を書くのは、やめましょう。 無駄に加害者を刺激し、さらなる犯罪を招きます。 反論内に、もし罵倒語や差別用語が含まれれば、被害者も加害者になってしまいます。 黙って、告訴。 それが大人の戦い方です。 ■刑事告訴の方法 刑事告訴は被害者の作業が多いので、細かく記します。 まず、弁護士と相談の上でも、自力で資料を揃えてでも、どちらでもよいので、あなたの住所の所轄警察署へ行きましょう。 署の案内所で「刑事告訴するので刑事課へ」と告げてください。 地方警察はサイバー犯罪に詳しくないこともあります。 中傷誹謗と言うと、生活課へ案内され、愚痴を聞かれて終わることもあります。 被害届を出すだけでは正式な捜査要請でなく、警察が動かないこともあります。 「刑事告訴します」と、きちんと伝えてください。 この数年で、警察内でもサイバー犯罪への意識が高まっています。 刑事告訴であれば、かなり本気で動いてもらえます。 客観的に、淡々と、けっして加害者を非難せず、事実のみを伝えましょう。 刑事課で、証拠や資料を渡して説明します。 すると警察が2ちゃんねるへ、加害者のIPアドレス開示を要求します。 そのIPからプロバイダを割り出します。 警察が「割り出し方がわからない」と言ったら、ドメイン/IPアドレス【whois情報検索】を教えましょう。 URLは末尾の参考資料内です。 プロバイダが判ったら、次は警察からプロバイダへ、個人情報請求をしてもらい、そのIPのその時刻の利用者を教えてもらいます。 それで犯人を特定できます。 ネットカフェやプロキシではごまかせないことは、後述します。 犯人が特定できれば、次は損害賠償請求しましょう。 損害賠償の交渉のための内容証明郵便のみを弁護士に依頼するなら、弁護士費用は数万で済むことが多いです。 損害賠償する時の契約書へ、「再犯した時には違約金をいくら頂きます」と、高額違約金の条文を入れれば、ほぼ再犯防止できるそうです。 裁判は原則公開ですが、起訴後、担当検事に被害者氏名等を出さないよう頼めば、匿名でできます。 改正刑事訴訟法では、公判で被害者の名前を匿名にする措置が条文化されます。 告訴は、起訴があるまでは告訴人により撤回できますが、一度撤回すると二度と同じ事件について告訴することはできません。 ご注意ください。 刑事告訴は費用がかかりません。 資料を作り、何度か警察へ行くだけで、賠償金が手に入ります。 訴訟ゴロ、と呼ばれるプロを生むほどに、短期間で数十万も儲かる、告訴は美味しい仕事です。 ■未成年による刑事告訴 刑事なら、被害者が未成年でも告訴できます。 保護者の許可があれば、民事の損害賠償も請求できます。 未成年が親に内緒でしたい場合は、損害賠償は取れません。とはいえ、許せない相手に法的制裁を与える、よいチャンスです。 加害者の親はたいてい、子供がインターネットで犯罪を犯していることなど知りません。相手の名と住所を知ることができれば、親に被害を訴えることもできます。普通の親なら、子供の犯罪を知れば、インターネットやゲームを禁止するでしょう。損害賠償は取れなくても再犯防止はできます。 夏休みの研究、文化祭の出し物として。 刑事告訴の体験レポートを発表するのも、ユニークです。 敬語ができなくても、かまいません。 人の話を聞く姿勢のある素直な人なら、大人の世界でも好かれます。 ただ、せっかく面白い仕事をするのですから、やるなら保護者の許可を得て、損害賠償を取るところまで、しませんか? このレポートを印刷して親に見せ、勉強のため法律を実体験したい、と言えば、許可をくれるかもしれません。 書類作成でミスしないよう、作業は大人と一緒にしたほうがよいです。 自分に自信を持って、楽しんで出発してください。 法律は、怖くありません。 この国で生きるための大切なルールです。 上手に乗りこなす、素敵な大人になってください。 なお。 加害者の住所がわかったからといって、先輩に頼んで闇討ちなどするのは、別の犯罪になりますので、やめましょう。 小さな犯罪は、犯罪者の世界でも地位が低く、刑務所内でもイジメられます。友達と愚痴をこぼせば済む話を、わざわざ公共の場に匿名で書くのは、そんな場所でもなければ話を聞いてくれる相手もない、無力で孤独な人だからです。 悪口を言うとき、人の顔は汚れます。目は濁り、口は貧しげに垂れます。悪口を言うたび、人を不快にさせる卑しさが増します。友達は去り、異性に蔑まれ、ますます誰にも愛されない顔になります。 卑しさは伝染します。 嫌われる顔になりたくなかったら、あなたは決して中傷に参加してはいけません。さっさと警察への提出資料を作ったら中傷ページを閉じ、二度と開かないでおきましょう。それが愛される幸せな顔になる秘訣です。 ■用意する物 告訴も訴訟も、用意するものは一緒です。 * 対象となる掲示板サイトの名前、URL * 誹謗中傷されている掲示板の掲示板名や内容 * 誹謗中傷されている掲示板の誹謗中傷に当たると考える書込の、書込番号やURL及び書込内容 (大阪府警HPより引用。URLは後述参考資料内) 中傷の証拠は、パソコンのスクリーンショットでよいそうです。 テキストデータは簡単に改ざんできますので証拠になりません。 スクリーンショットも改ざん可能ですが、中傷加害者が改ざんだと主張するなら、加害者側が、改ざんした証拠を提出しなければなりません。ほぼ不可能でしょう。 長すぎるスレッドは、弁護士も刑事も、読むのが大変です。 どこが中傷かが分りやすいよう、証拠の他、解説つきダイジェストも作ると親切です。 ■■■付記■■■ ■警察の能力 2000年から警視庁のサイバー犯罪対策が強化され、日本の警察も優秀になりました。 ネットカフェからアクセスしても、串と呼ばれるIPごまかしを使っても、 誘拐予告犯人などが、みな逮捕されています。 警察が本気になれば、犯人に逃げ場はありません。 警視庁のハイテク犯罪対策総合センターでは、寄せられる相談のうち23.7%が、名誉毀損と中傷誹謗に関するものです。 多数の案件を処理したベテランですので、疑問点があったら警視庁、ハイテク犯罪対策総合センターに問い合わせてもよいかもしれません。 ■弁護士の探し方 もし弁護士を雇うなら。 連絡の途切れない、説明のわかりやすい、料金も明瞭な、信頼できる弁護士を探しましょう。 まずは県内の弁護士会にアクセスしてください。 ほとんどが、無料もしくは小額で、法律相談を受けてくれます。 サイバー犯罪や誹謗中傷に詳しい弁護士に会えれば、なお良いです。 何人かの弁護士と話してみましょう。 よい弁護士と知り合えれば、この先の人生の、無形の財産になります。 法律は、生き物です。 年ごとに法解釈が変わり、新法も設立されます。 弁護士さんの中には一部勉強を取りこぼし、最新解釈を知らないこともあります。 知らないことがあっても横柄にせず、素直にミスを認める弁護士さんなら、よい人です。交渉力は抜群かもしれませんので、長い目で見守ってみてください。 どの業界でも、本当に有能な人間は威張りません。 依頼人を見下すような弁護士は、賠償金を取るまでの付き合いであってもストレスです。探せるものなら他の弁護士さんを探したほうがいいかもしれません。 ■2ちゃんねるについて すこし前までは、インターネットは無法地帯でした。 このわずか数年で劇的に法整備が進み、ネットの世界にも良識や法律が届きつつあります。 サイバー侮辱罪、改正刑事訴訟法も、施行が間近です。 今後はさらに法改正が進み、加害者を追いやすくなります。 2ちゃんねるは匿名ではありません。 固定ハンドルを叩く行為も基本的には禁止です。違反し、警察等から要請があった時にはIP公開することも、規約に明記されてます。 ネットwatch板等ごく一部では不法な書き込みが放置されますが、中傷していい板ではありません。IP保存されてます。 告訴されたら刑に服す、自己責任の掲示板です。 ■■■最後に■■■ 本レポートは、卑劣な匿名犯罪の被害者救済を目的として作成しました。 転載、リンク、印刷配布、ご自由にどうぞ。 文責は放棄します。 レポート内のすべての情報は、自己責任でご利用ください。 ■■■主な参考資料■■■ 警視庁ハイテク犯罪対策センター http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/haiteku/haiteku/haiteku1.htm 誹謗中傷ネット被害救済ボランティア http://www.sosiga.jp/ whois情報検索 http://www.cman.jp/network/support/ip.html 大阪府警 掲示板上で誹謗中傷を受けている http://www.police.pref.osaka.jp/05bouhan/high_tech/taisho/01_3_1.html したらば元社長日記 掲示板での書き込み者を特定する方法 http://gentown.sakura.ne.jp/midnight_waseda/cache/20070201232915.html 日経トレンディ 増え続けるネットの誹謗中傷、もしもの時の法的撃退術 http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20071025/1003871/ 弁護士事務所一覧 http://www.tanteisha.net/bengo.html 御器谷法律事務所 http://www.mikiya.gr.jp/Slander.html E-ジャスティス法律事務所 http://www.e-justice.jp/index.html ネット上の法律問題 2CH損害賠償判決 http://homepage3.nifty.com/akilaw/net/main.htm 中央日報 「サイバー侮辱罪」新設へ http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=68160 リアル弁護士だけど何か質問ある? http://archives.mmorpgplayer.com/nmz/data/live4.2ch.net/ogame/dat/1069065282.html BOT撲滅運動の結末 http://blog.goo.ne.jp/scorpio-gp/e/638d888cd832b95b656f5f7d46e32e1a プロバイダ責任制限法 http://www.isplaw.jp// ぼくらの研修日記 「2ちゃんねる」名誉毀損など43件敗訴 http://edublog.jp/fmv/archive/105 刑事告訴 http://www.infoeddy.ne.jp/uchinku/sosyo/Words2.htm |